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  • 執筆者の写真中野 薫

長年クラシック音楽で技術を磨いてきた人たちが、 食べていけるプロとしてやっていけるために必要とされる能力が何なのか?




題名のない音楽会

前回に引き続き、葉加瀬太郎さんのプロ発掘オーディション。

長年クラシックで音楽を磨いてきた人たちが、

食べていけるプロとしてやっていけるために必要とされる能力が

何なのかがよくわかる内容だ。

オーディションに関しては2回目の企画で、

第1回目の時のオーディションと同じく、

クラシックの技術を長く練習して取得しててきてもぶち当たる大きな壁、

リズムとアンサンブル能力。

この二つは切っても切れない。

リズムは、まず、クラシックに無いグルーブに乗れなくて混乱するし、

メトロノームのように絶対的ではない。

そして、その時のアンサンブルするメンバーの中で生まれてくるので、

グルーブがメンバーと調和していないと、リズムが悪いと言われてしまう。

特に、今回は「情熱大陸」というラテンベースの曲で、

特に日本人にとっては苦手とされるラテンのリズム。

ラテンのグルーブに乗って、メロディーが演奏できるかがまず課題で、

それがアンサンブルできてないと「リズムが悪い」になってしまう。

つまり、周りを「聞くこと」がアンサンブルすることの

重要なポイントにもなってくる。

クラシックで一人で練習する時間が長ければ長いほど、

周りの音が聞けなくなってしまっている。

私も自分のできなさに(今でも)打ちのめされる。

ビックバンドのアレンジ録音でプロと演奏させてもらうたびに、

プロが音楽を演奏することの意味に大きな気づきと同時に自分のできなさに

今まで何をやってきたんだろう、と挫折感を味わう。

でもそれが体験できて、実感できたことはありがたいことだったと思っている。

プロの演奏家を目指せるレベルでもないことはよく分かっているけれど、

接する音楽に対する見方、聞き方、音の出し方の次元の違いが分かっただけでも、

見ている視線、方向性が今まで一元的で偏っていたことの反省につながる。

「リズムが悪い」と言われたオーディション受講生に、

ベースの方が、「踊りに行けばいい」とアドバイス。

その場で葉加瀬さんがステップを踏みながらの演奏を提唱してやってみる。

リズムは頭の中でカウントするだけでなく体全体を駆け巡って出てくるんだと

以前見たホルン奏者の言葉を思い出す。

ロンドンフィルのホルン奏者がキューバへ行って現地のオケで演奏するドキュメントで、

「私たち(西洋人)は指の中でカウントを取るけど、

彼らは体でカウントを取る」と。

現地のオケメンバーはオケの仕事(クラシック)だけでは食べていけないので、

バーやクラブで、現地のラテンの曲を演奏する仕事を掛け持ちでせざるを得ない。

必然的に、生活の中にあるラテンのリズムは体に入り、

クラシックと弾きわけの切り替えができるのだろう。

オーディションでプロが、体にないものはいくら練習しても出てこない、

練習しても無理、無駄?!と言っていた。

ジャズでは足でカウントするが、クラシックでやると怒られる。

でも、リズムにのるには必須。

(もし生徒さんで足カウントしていても怒らないでね!)

リズムの頭に乗るだけでなく、

裏を感じて演奏するには頭を把握していないと乗れない。

乗るのと仕切るのは違う。

どうしても頭で仕切ろうとしてリズムが前に出てしまう。

私自身のリズムに対するコンプレックスという課題が、

リズムだけでなくアンサンブルと関係することを確証した内容だった。

アンサンブルは周りをよく聞くこと、そしてフロントで演奏する立場なら、

メンバーに認めてもらわないと演奏はついてきてもらえない。

メンバーをやる気にさせる何かがないと辛い時間になる。

後から録音聞いて、自分だけ飛び出した痛い演奏に穴があったら入りたい気分。

そのまず第一がリズム。そしてアンサンブル力。

そして音色。

今回の合格者のポイントは音色がいいということ、

プラスアンサンブル力を感じさせる、だった。

音色は音楽の8割9割を占めると葉加瀬太郎さんの言葉。

テレビを通しての音なので、正直他の受講生とのヴァイオリンの音色の違いは

よくわからなかったけど、生では大きく異なるのだろう。

多くの音を弾かなくても、1音で音の違いは分かるし、

時間が長くなればなるほど、

いい音で時間を積み上げることとそうでないことの違いは大きいだろう。

もちろん、リズムのグルーブがある方がいいけれど、

リズムは改善される率は高いだろう。アンサンブル力のある人ならば。

番組の内容はプロレベルのお話だが、

世界の片隅で音楽を教える端くれとしても、

何を教えるのか考えさせられる。

楽譜を読むこと、正しく読んで楽譜通り正確に弾くこと、

そして表現すること、

もちろんそれも大切だけれど、

一人で弾くだけでは学べないこと、アンサンブル力(周りを聞く力)、

リズムのグルーブ、

それに即興でオブリを入れたり自由に創作できる力、

ピアノでいい音を鳴らせること、

そういうことを指導することの大切さを痛感する。

楽譜を完璧に読めて弾けてからの段階でなくてもすぐに指導に導入できる。

楽譜を教えるのではない。音楽そのものを教える。音楽の本質に近づく、触れる。

そのためには楽譜を理解したら、楽譜から離れること、

視覚情報を少なくして、より聴覚を開放して聞くことが可能だ。

それには曲の流れである和声進行、コード分析の把握は最低限必要で、

そこからリズム、アンサンブル、音色、創作の力を育てることにつながってくる。

音楽の楽しさはそちらの方にたくさんあるように思う。

レッスンにはこういう要素をもっと多く時間をかけたいものです。

和声進行、コード分析の把握していれば、

先生はその場で即興でアンサンブルする機会を多く作ることができる。

そして生徒さんに創作する時間を作ることもできる。

目の前にある楽譜には情報が多すぎる。

情報溢れるメディアに振り回されるのと同じ。

必要最低限のものにして、そこからレッスンを組み立てる、

いや、レッスンを、音楽を生徒さんと共に楽しむことで音楽の本質に近づく

ことができる時間となればと思う。

本当に楽しいレッスンを!

本当に音楽の楽しさを伝えられるレッスンを!


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